大阪地方裁判所 昭和25年(行)25号 判決 1951年3月09日
原告 大西末子
被告 大阪府知事
一、主 文
原告の請求はこれを棄却する。
訴訟費用は原告の負担とする。
理由
被告がなした原告主張の収用処分は大西仙太郎所有の食糧に対してなしたのであるから、大西仙太郎が原告となつてこれが処分の取消を求めるなら格別、末子は訴の当事者たる適格を有しないから、本件訴は不適法である。
本案に対する答弁
請求の趣旨に対する申立、主文同趣旨
請求の原因に対する答弁
原告主張事実はすべてこれを認めるが、被告のなした収用処分には何等違法はない。すなわち、食糧確保臨時措置法によれば、変更供出数量(補正された供出数量)に対する異議申立の制度は認められていないので、被告は、原告主張の異議に対し府経済部長をして、原告にその旨通知せしめ、なお供出を完了して保有米が著しく不足するときには食糧検査官ならびに、村長に申出て、配給の手続を受ける様、併せ知らせておいた次第である。又大阪府全体としての割当は完納になつたとしても個人の供出の責任はこれとは別個であるから、期限までに供出しない以上、収用処分をするのは当然で、何等違法な点はない。従つて原告の請求は理由がないから棄却さるべきものである。
(立証省略)
三、理 由
被告により本件収用処分がなされるに至つた事情は当事者間に争なく、原告が右収用処分の違法なりとして主張する事実も被告のすべて認めるところである。
そこで先づ本案の判断に入るに先立ち順序として原告の当事者適格についての被告の妨訴抗弁につき、判断すべきところ、およそかかる妨訴抗弁を判断するには或る程度証拠調をしなければならないのに、他方本案の請求が、主張自体により理由がないこと明かなような場合には敢て右の順序に従う必要もないと解するから、本件においても被告の右抗弁に対する判断は暫くこれを措き直ちに本案につき考えてみることとする。そもそも現行法上変更供出数量に対する生産者の異議申立権の認められていないことは被告主張の通りだし、又大阪府全体の供出割当が完納されたからと云つても未供出者の供出責任が免除される謂はれもない。すると原告の請求はその理由のないこと明かであるからこれを棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し、主文の通り判決する。
(裁判官 乾久治 中村三郎 朝田孝)